2020年5月29日金曜日

シームレスな顧客体験

北野です。

コロナの影響で獣医療でもオンライン診療の導入が進んでいる。
人医療では保険点数の参入もでき、初診からの解禁も進んでいる。

オンライン診療は感染症対策としての側面もあるが、
本質は顧客体験の向上であると考えている。

動物病院を選ぶ際の基準に、
来院前から来院時、来院後に至るまでのプロセスで、
顧客体験の向上が重要になる。

これは、昨年のWJVF以降、JBVPや動臨検での
講演時からお伝えしていること。
顧客体験の向上とは、シームレスな対応を行うこと。


例えばこんな世界。

病院に行こうと思う際にスマホを開き、
病院のアプリを立ち上げる。

そこから診療予約を行うと、
診療内容に即した問診票が現れて、
気になる点などの入力を終えておく。

そういえば、フードもそろそろ無くなりそうなので、
一緒に買うフードのオーダーも済ませておく。

通院当日はスマホに予約リマインドが届くとともに、
現在の院内の混雑状況も表示されている。

自分の順番まで、まだかかりそうなので、
少し病院の近隣でも散歩しておこう。

順番が近づいてきたと、スマホに通知がやってきた。
そろそろかなと、病院へ向かうとほぼ待ち時間なく診察に通される。

既にこちらの気になる点は伝えてあるので、
手短な問診で診察がスタート。
同じことを何度も伝えなくてよいのでストレスもない。
(そういえば昔は何度も同じ話をしていたな。。。)

気になる点は全て解消され、
様子見で1週間後に再診が必要とのこと。
まずはひと安心。その場で次回予約もとっておこう。

受付に本日のお会計を確認しに行くと、
事前オーダーしているフードも用意されている。

会計了承ボタンを押すと、
事前登録しているクレジットカードから
自動決済されて、決済内容がメッセージで送られてくる。

病院を出ての帰宅途中、
今日の診察内容の概要や
今後1週間の注意点など、
資料や動画などで送られてきた。
確認のために家族とも共有しておこう。


こんな世界を想像し、
実現に向けて取り組んでいる。
夢物語のようなものではあるが、
こういった顧客体験の提供が今後重要になってくる。

もちろん、医療である以上、
医療の質が根幹であることには変わりはないが、
顧客体験の低さは来院の大きな障壁にもなってくる。

今は3密防止という旗印があり、
病院のシステム変更において、
院内スタッフ・飼主様の両面で導入障壁が大きく下がっている。

予約システム、オンライン診療、待ち時間表示システムなど、
それらをどうシームレスに繋ぎ合わせていくか。

今後、実現に向けて取り組んでいきたい。


2020年5月22日金曜日

先を見据えるロードマップ

北野です。

5都道府県を残して緊急事態宣言が解除された。
残りも25日の状況で解除の可能性が高まってきている。

1つのタームの区切りとなるが、
新たなタームの始まりともなる。

新型コロナの影響はいつまで続くかについては
識者によって18ヶ月〜2年など色々な見解がある。

正解は誰にも解らないのだけど、
少なくともワクチンができるまでの期間を
乗り切るための準備は必要となる。

おおよそ2年間、来年末までと仮定して、
3ヶ月ごとに期間を区切ると
7期間に分けられる。

①2020/4-6月期【現在】
②2020/7-9月期
③2020/10-12月期
④2021/1-3月期
⑤2021/4-6月期
⑥2021/7-9月期
⑦2021/10-12月期

これらの中で
【資金面】【人事面】という内のことと、
【販促面】という外のことを計画的に進める必要がある。

資金面でみると、
6月と12月は通常は賞与の時期であるし、
10月には最低賃金改定もあるし、
法人税などの支払い時期もやってくる。

意外と忘れがちだが、
クレジットカードのポイント還元が終わる7月以降は、
カード手数料が増額されてくる。

人事面だと、
次年度の採用を行うか否かの判断や、
内定を出すタイミング、昇格・昇給なども考慮する必要が。

販促面だと、
今夏以降の来院促進から、来期の予防シーズンについてなど、
売上安定のための取組も必要に。

このように、先々の予定を予め組んでおき、
対応できるためのロードマップ作成が必要となる。

非常時は「悲観的な計画」が何よりも重要になる。
しっかりと先を見据えておきたい。

2020年5月15日金曜日

これからの情報発信についての考察

北野です。

5月14日に一部で緊急事態宣言が解除され、
残る特定警戒地域についても21日に見直しが予定されている。

まだ警戒が必要な東京においても人出が増えてきているし、
今月末にはかなりの人手になってくるだろう。

外出自粛による経済停滞の反動やリベンジ消費などの期待感もあるが、
マクロな経済動向を見ると中長期的な悪化は避けられないと感じる。

動物病院は様々な業種の中でも、今回のコロナの影響は軽微であり、
コロナの経済的な影響を現場的に感じている人は少ない。
特にスタッフさんにおいては自分事と捉える方は僅かである。

経営の目的はいくつもあるが、根本的には事業継続である。
動物(顧客)を守る、従業員を守る、そして経営者を守る。
事業の継続がなくては何も守れない。
そして事業継続の要は現金(キャッシュ)である。
黒字倒産という言葉があるように帳簿と通帳の数字は大きく異なる。

この通帳の数字を増やすためには原則として、
お金を借りるか、売上を作るしかない。
その売り上げを作るための活動がマーケティングである。

コロナによって何が変わるのか?
という議論は色んな場所で起こっていて、
楽観論もあれば悲観論もある。

ただ、間違いなく言えることは、
残念ながら従来とは同じ状態には戻らないということである。

最も大きな変化は価値判断の変化であろう。
今の3密対策という言葉に代表されるように、
そもそもその店や企業の持っている実力ではなく、
別の要素が重要視されるようになる。
どんなに味の良い名店でも、混雑していれば敬遠される。

こうなると、自院の実力の内に3密対策を設けることは必須になるし、
情報発信力が無いと敬遠され続ける。
病院の混雑状況を可視化できるか?というのも重要になるだろう。

星野リゾートでは、館内滞在者・宿泊者に対して、
過去データに基づく、館内施設の混雑状況を知らせるアプリの開発を行っているという。

今までの情報発信は売るための広告が主であったが、
今後は、選ばれるための広報が必要となってくるだろう。
情報発信の仕方が複雑になってくる。

広報とは、病院の在り方を伝えるものであり、
ブランディングのための取組でもある。

不況期は本物が選ばれることは、
過去の不況期からも証明されている。

多くの病院が広告のみを打つ中、
皆さんの病院は何を広報するか、
一度考えてみていただきたい。

2020年5月8日金曜日

メンタルヘルスと意識強化

北野です。

新型コロナによる影響で、
日々に不安を抱えている方が増えている。

飼い主様はもちろんですが、
スタッフさんも同様。

蓄積疲労の3段階という理論がある。

1段階として、何かあったとき、
落ち込んだりするが、ぐっすり眠れば回復する。

でも、何らかのストレスがかかり続けていると、
23ヶ月で第2段階に移行しやすいとのこと。

2段階のときには、
イライラし不安になりやすい
同じ事でも2倍のダメージを受ける
回復には2倍かかる

3段階のときには、
心身に病気の症状が現れる
同じ事でも3倍のダメージを受ける
回復には3倍かかる

3段階まで到達してしまうと、
ちよっとしたことでも、メンタルへの影響が大きくなり、
ストレス過剰になり、頭が真っ白になり、
普段とは違う行動に繋がってくる。

コロナというストレス環境下においては、
従業員管理において、こういった点も考えていく必要が。


これらの防止策としては3つあると考えている。


1つ目は、正しい知識を持って正しく恐れること。

毎日テレビをつけても、yahoo!ニュースを見ても、
Twitterを見ても、コロナのことばかり。
そこに書かれている情報、見聞きする情報は玉石混合。

もちろん獣医療従事者として、
恐れることは重要ですが、
正しい恐れ方と間違った恐れ方がある。

やみくもに不安に思うのは間違った恐れ方。
コロナがどういうもので、何が感染リスクがあるのか、
それを正しく知ったうえで正しく恐れることが重要。

会員様のスタッフさんにも、
病院の感染対策について不安をいう方もいるけれど、
そもそもマスクの着け方や着ける意味を分かっていないことも多い。

こう言った点を教育することも重要だと感じる。


2つ目は、繋がりをより意識すること。

繋がりとは孤独を感じさせないこと。
外出自粛の影響でリアルに人と会うことや、
ソーシャルディスタンスとして人との距離感が普段より広がっている。

ソーシャルディスタンスはコロナとの付き合い方には有用だけど、
人との付き合い方には悪影響になっている。

もちろん感染対策が重要なので、
距離感を詰めることは難しいけれど、
お互いに「ありがとう」の言葉をいつもより言い合う、
「おはよう」の挨拶をいつもより言い合うなど、
孤独ではないということを相互に意識して行うこと。
これだけでも全然違う。

人医療においては医療崩壊を防ぐために、
日々多くの人が自身の感染を鑑みず頑張ってくれている。
こういった姿に全国からありがとうが届いている。

動物病院においても何かできることはないだろうか。
飼い主様アンケートなども良いかもしれない。

自分の働きが誰かに感謝されている、認められている、
それが院内の同僚先輩後輩からだけではなく、
サービス提供相手の飼い主様から届けば、
自身の働きにも改めて繋がりを持てると感じる。


3つ目は、しっかりと睡眠を取ること。

軍隊においては、休むということが任務の1つになっているという。
蓄積した疲労が回復しないまま仕事に取り組むと上述の第2段階に進みやすい。

疲労回復の基本は睡眠にある。そしてしっかりとした食事。

健康経営というテーマがあり、
従業員が心身ともに健康でいられるための取り組みを行うこと、
それを求められる時代にもなっている。

一方で戦時中は戦力の選抜も求められる。
経営においても心身ともに健康で病院方針に沿って
強い意識で働けるスタッフが何よりも求められる。

こういった時代を一緒に乗り越えられたメンバーは
この先の未来を一緒に歩める可能性が非常に高い。

経営体としては、
正しい知識を与え、繋がりを提供することはこの時代には必須事項。
ただし、それを活かして健康でいられるかは当人次第。

こういったプロセスを繰り返すことで、
非情ではあるが、人員の取捨選択も行うことも必要になる。

結果としてこれが経営者にとってのメンタルヘルスの強化に繋がると感じる。

2020年5月3日日曜日

明るい兆しと自己変革

北野です。

緊急事態宣言が出て約1ヶ月、
さらに1ヶ月ほどの延長が決まりそうです。

リモートワーク、外出自粛などにより、
自宅で過ごす時間が長くなり、巣篭もり需要により
消費の内訳も変化しています。

他者の目を気にした外向きの消費ではなく、
生活必需品、家で快適に過ごすためのもの、
家族のためのものなど内向きの消費にシフトしています。

動物の飼育というものも、この内向きの消費の1つとみられています。
アメリカの様子になりますが、ロックダウン中の都市で動物の譲渡が加速しているという記事もあります。

【参考:WIRED 自己隔離する人々がペットの引き取り手になり、全米のアニマルシェルターが“空っぽ”になり始めた】
https://wired.jp/2020/04/21/coronavirus-pet-adoption-boom/

また、各地の会員様で仔犬・仔猫の新患が増えたという声や、ブリーダーの競りがいつもよりも活況であった、というような声も聞こえていきます。

今後、消費行動の変化により、外向きの支出金額が内向きの支出金額に振り分けられ、ペットへの消費金額は減少しにくいと言えるでしょう。

ただし、手放しで喜んでいられるかというとそうではなく、世の中の景気動向は確実に悪くなる中では、消費先を選定する目は確実に厳しくなります。他業種も生き残りをかけてサービスレベルを向上させてくるでしょう。

同じお金を払うのであれば、より確実なところ、安心なところ、サービスレベルが高いところというように、動物病院自体も変化することが必要になります。変化に対応できないところは淘汰されていく、そういった時代になるかもしれません。

明るい兆しに希望を持ちながらも、自己変革への行動が求められるでしょう。