2019年12月20日金曜日

動物病院における目標管理方法


北野です。
年末に差し掛かり、
来期の目標設定を考える病院様もおられると思います。

今回は目標管理についてお伝えします。
会員様でよくご提案するのがOKRという手法です。

元々はGoogleなどのIT企業で導入が始まった手法ですが、
個人的には今の時代のマネジメント手法として最適だと考えています。

OKRとは、Objectives and Key Resultsの略称で
訳すと目標と成果指標となります。

院長先生の多くはアイディアマンであり、
新しい取組を積極的に導入したいという方が多いといえます。

一方で従業員側は、変化を嫌う方も多く、
新しい取組には消極的な方が多いことが一般的です。

しかし、コンサルティングを行う中で、
この問題は従業員側のマインドの問題ではなく、
「取組の目的が上手に伝わっていない・理解されていない」ことが、
最も大きな要因であると感じています。

残念ながら、多くの院長先生が
新しい取組を行う目的や目標に対しての説明を
きっちりと行っている方は少ないといえるでしょう。

従来は、院長の掛け声で一斉に動くという時代もありましたが、
現在は「納得感」というものがないと動かないということが多々あります。

実際に、取組を行う目的や目標をしっかりと説明することで、
スムーズに実行し始める病院様も多くみられます。

こういった時代にスムーズに行動し、
前進していくための手法としてOKRを推奨しています。

OKRは1つの目標(OObjectives)と
3つ程度の成果指標・行動(KRKey Results)とで構成します。

例えばある会員様では、

目標に「健康診断の受診者数を増加させる」というものを設定し、
成果指標・行動には
(1)看護師による健診説明カウンセリングの実施(2名)
(2)LINE@での健診コラムの配信(週1回計12回配信)
(3)来院した飼主様に健診の声掛けを行う(80%に)

というものを設定しました。

このOKRを取り入れる1つの目的は、
目標と行動を必ずセットにして伝えていくということです。

多くの場合はこれらが分離して伝わることが多く、
本来は目標達成のために行う取組だったのが、
「取組自体が目的化してしまう」ということがよく起こります。

こうなると、何のためにこれやるんだっけ?
ということが起こりかねません。
さらに、いつの間にか誰もやらなくなっている・・・。

こういった状態を防ぐためにも有用です。

また、各行動は達成したかの確認を行う必要もありますので、
必ず数字で確認できる行動にする必要もあります。

本来、OKRはもっと大きな目標に対して行うのですが、
動物病院様の現場では、
まずは小さな目標に対しての取組から始められるとよいと思います。


本格的に導入したいという方は下記をご覧下さい。

【参考】OKRを設定する


2019年12月14日土曜日

診察料の考え方

北野です。
先日、会員様と診療単価の話になりました。
欧米に比べると日本は診療単価が圧倒的に低いというものです。

弊社でも毎年海外動物病院視察に行きますが、
どの国よりも日本の診療単価は低いといえます。

【過去に行った国】
イギリス、ドイツ、スペイン、ポルトガル、イタリア、
アメリカ、オーストラリア、香港、ベトナム、中国など
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日本と海外の料金体系の大きな違いは、診察料金に関するものです。
日本では、初診料・再診料・再初診料などと分かれていますが、
海外では、診察料という1項目のみであることがほとんどです。

海外での診察料は15分、30分など時間で料金が区切られており、
長く話せば話すほど診察料が高くなるようになっています。
(海外の診察料は30分5000円程度のところが多い印象があります。)

このため、「1時間話して再診料のみだった・・・」
ということがありません。

獣医師が働いた(話した)分だけ診療費用が報酬として
支払われるようになっています。

獣医療内容は欧米の情報や技術を基にしているはずなのに、
料金体系は日本独自の文化となっています。

こういった相違はどう出てきたのでしょうか。
これは、動物病院の診察料体系が、
人医療の診察料体系を参考にしたからだと思われます。

そもそも日本においては国民皆保険制度のため、
自己負担額が3割程度となり医療を低価格で受けることができます。
こういった背景が大きな影響を及ぼしていると思われます。

ちなみに、平成4年の保険点数は下記のようになっています。
・初診料208点(2080円)実質負担額・・・208円
・再診料55点(550円) 実質負担額・・・55円

窓口負担額は
・昭和59年~ 1割負担
・平成9年~ 2割負担
・平成15年~ 3割負担

【参考】中医協基本小委(2008年6月4日)資料
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/06/dl/s0604-4b.pdf

初診料は獣医療よりも高額ですが、再診料は獣医療と同等程度です。
このあたりからも人医療の影響を感じます。

しかし、保険点数は経済動向や税制改革などにより2年に1度見直しがあり、
20%程度の値上がりが続いています。


こういった点を踏まえると、
人医療のように定期的に値上げの見直しを行うなどが必要となるでしょう。

また、海外の例を参考にすると、
「所要時間」を目安にした料金体系も検討する必要もあるでしょう。

現在は15分であろうと、1時間であろうと、
診察料として請求する額は同額です。

動物頭数が減少する中で、
最低賃金が毎年上昇し、生産性向上が叫ばれている現在では、
従来の価格体系を続けていては堅実な経営を続けられる保証はありません。

手術費用や検査費用を値上げする病院様はありますが、
診察料の値上げに踏み込める病院様はまだまだ少数です。

来年はこういった点を検討していく1年になると感じます。

2019年12月6日金曜日

ダイナミックプライシング

北野です。
値付けの手法として、
需給バランスによって価格を変える
ダイナミックプライシングというものがあります。

代表的なものとしては、
航空券やホテル料金などがあります。

繁忙期や閑散期によって、
料金が変わるというものです。

従来は消費者側のニーズによって、
値段の上げ下げを行うというように、
消費者側の事情によるものでしたが、

最近は昨今の人手不足も受けて、
労働力の多い少ないによって価格を変えるというような、
事業者側の事情による取組も増えてきました。

昔からある手法としては、
飲食店でのハッピーアワーのように、
働き手はいるけれどお客さんが少ない時間帯に割引を行うことで稼働率を高めるというような取組です。

動物病院においても、
ペットホテルの繁忙期割増などはありますが、
労働力の状況に応じた価格設定も今後は検討していくべきだと感じます。

特に、産休育休明けスタッフなど、
パートメンバーが多い病院などは、
労働力が多い10時から16時頃を中心とした時間帯に来院を促進することで、来院の平準化を目指すこともできるでしょう。

一部の会員様では、昼の休診時間帯を予約診療とし、パートスタッフのみで回すという取組も始まっています。

ただ、飼い主様に来院タイミングを任せるばかりでは、今と変わりはありません。

予約診療時間帯は再診料を割り引くなど、
飼い主様側のメリットを打ち出す必要があります。

そんな時にはダイナミックプライシングという考え方は非常に有効になると感じます。

今後、他業界においても労働力の多寡に合わせた価格設定を行うサービスが増えてくると思います。

ぜひ、そういった動向に注目してみてください。