2019年12月14日土曜日

診察料の考え方

北野です。
先日、会員様と診療単価の話になりました。
欧米に比べると日本は診療単価が圧倒的に低いというものです。

弊社でも毎年海外動物病院視察に行きますが、
どの国よりも日本の診療単価は低いといえます。

【過去に行った国】
イギリス、ドイツ、スペイン、ポルトガル、イタリア、
アメリカ、オーストラリア、香港、ベトナム、中国など
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日本と海外の料金体系の大きな違いは、診察料金に関するものです。
日本では、初診料・再診料・再初診料などと分かれていますが、
海外では、診察料という1項目のみであることがほとんどです。

海外での診察料は15分、30分など時間で料金が区切られており、
長く話せば話すほど診察料が高くなるようになっています。
(海外の診察料は30分5000円程度のところが多い印象があります。)

このため、「1時間話して再診料のみだった・・・」
ということがありません。

獣医師が働いた(話した)分だけ診療費用が報酬として
支払われるようになっています。

獣医療内容は欧米の情報や技術を基にしているはずなのに、
料金体系は日本独自の文化となっています。

こういった相違はどう出てきたのでしょうか。
これは、動物病院の診察料体系が、
人医療の診察料体系を参考にしたからだと思われます。

そもそも日本においては国民皆保険制度のため、
自己負担額が3割程度となり医療を低価格で受けることができます。
こういった背景が大きな影響を及ぼしていると思われます。

ちなみに、平成4年の保険点数は下記のようになっています。
・初診料208点(2080円)実質負担額・・・208円
・再診料55点(550円) 実質負担額・・・55円

窓口負担額は
・昭和59年~ 1割負担
・平成9年~ 2割負担
・平成15年~ 3割負担

【参考】中医協基本小委(2008年6月4日)資料
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/06/dl/s0604-4b.pdf

初診料は獣医療よりも高額ですが、再診料は獣医療と同等程度です。
このあたりからも人医療の影響を感じます。

しかし、保険点数は経済動向や税制改革などにより2年に1度見直しがあり、
20%程度の値上がりが続いています。


こういった点を踏まえると、
人医療のように定期的に値上げの見直しを行うなどが必要となるでしょう。

また、海外の例を参考にすると、
「所要時間」を目安にした料金体系も検討する必要もあるでしょう。

現在は15分であろうと、1時間であろうと、
診察料として請求する額は同額です。

動物頭数が減少する中で、
最低賃金が毎年上昇し、生産性向上が叫ばれている現在では、
従来の価格体系を続けていては堅実な経営を続けられる保証はありません。

手術費用や検査費用を値上げする病院様はありますが、
診察料の値上げに踏み込める病院様はまだまだ少数です。

来年はこういった点を検討していく1年になると感じます。