2020年10月30日金曜日

2021年以降の採用に向けて

 北野です。

有効求人倍率が1.03となり、1.00を下回る都道府県も14に増加した。


生活関連サービス業、娯楽業は32.9%減少

宿泊業・飲食サービス業は32.2%減少

卸売業・小売業は28.3%減少

製造業は26.7%減少

となっている。


世間ではこのようになっている一方、動物病院業界は相変わらずの採用難が続いている。


今年は新型コロナの影響で春休み夏休みの6年生の実習見学も減少し、新卒採用も苦戦が広がっている。


新卒採用を行えた現場での感覚だと

15年生までに実習見学へ行った病院

2)人材紹介から紹介された病院

という、今年は2つの傾向にあったように感じる。


他業界では人材紹介を使うケースは一般的ではあるし、動物病院業務においても徐々に浸透し始めていると感じる。


人材紹介を上手に使うことはこれからは必須になるとは考えるが、自院でできることを考えてみたい。


大きく考えると

1)中期計画

2)緩やかな母集団形成

3)コミュニケーションツール整備

という3つになると考えている。


1)中期計画


今年を振り返ると5年生段階までの間に実習見学に行った病院から選ぶことが多く見られた。1番古いと2年生という病院様もあった。


多くの病院は5年生以降の実習しか積極的ではないが、シンプルに考えるとまずは中学年時からの実習受入を積極的に行うなど、単年度での計画から中期的な計画に切り替える必要がある。



2)緩やかな母集団形成


次に実習受入を行った学生や中途応募者などと、緩やかに繋がれるようにしておきたい。見込み客リストのようなイメージである。


応募者の情報管理を単発で終わらせていることが多く、応募者のリスト化や名簿化などは必要になるだろう。



3)コミュニケーションツール整備


次に母集団と緩やかに繋がれるようにコミュニケーションツールを整備しておきたい。


ザイオンス効果という心理学上の理論にあるように繰り返しの接点を作れると印象も高められる。重要なのは、応募者が就職先を考えた際の1番手に思い出されるかである。


学生側に立ってみても、初めましての病院よりも何回か接点を持った病院のほうが就職先として安心感を感じるのは間違いない。


理想的には個別対応ではあるが、現場での管理を考えると全体対応でも問題ない。求人用のLINE公式アカウントの開設など押し付けではない、緩やかなものが適しているだろう。



このように採用の在り方も新しい様式に変化させる時代になっていると感じる。


来年以降に向けて今から準備を始めていただきたい。

2020年10月26日月曜日

診療内キャパシティの最大化

北野です。

コロナ以降、ソーシャルディスタンス、買い控えなどの様々な制限により、様々な業界で経済活動・消費活動に制限がかかるようになっている。


7割経済という言葉があるように、コロナ以前の7割のボリュームになっても経営を維持できるように従来のビジネスモデルを変化させる必要性も言われている。子の場合、従来の売上に戻すためには1.5倍の成果が求められる。この1.5倍を実現するために効率化・生産性向上を目指そうという考え方でもある。さらにこの状態を一過性のもので終わらせず、無理なく永続性を持たせることも考えないといけない。


動物病院業界では、飲食店などの他業種に比べるとビジネスモデル変革の必要性は急務ではないが、コロナ以前からの課題である働き方改革、慢性的な人手不足、採用難などを考慮すると、労働環境整備や経営体質強化を目的として、ビジネスモデルを変化させることは必要であると考えている。Withコロナ期に時流に則してビジネスモデルを変化させることができれば、Afterコロナ期により強い経営体に変化している。


動物病院において、コロナ以降で最も導入が進んだのは予約制の導入である。実際に弊社の会員様でも感覚的に3~4割程度が予約制を新たに導入した。しかし、予約制の導入など診療方式を変更する場合には、従来のキャパシティを考慮した制度の導入が必要となることは忘れてはならない。


仮に1日に100件の来院があった動物病院が、30分で2枠の時間帯予約制を導入する場合には、25時間分の診療枠を設ける必要がある。獣医師3人×8時間とするか、獣医師5人×5時間とするかなどは、各病院の獣医師数・診療時間によって決まってくる。新規来院や急患用の枠も準備しておくことを考慮すると、さらに余裕を見た設計が必要となる。


自院で予約枠というような何らかの制限を設ける場合、その制限内での診療内キャパシティを最大化する取組を重点的に行わないと、単に自ら売上低下・チャンスロスを招く結果になってしまう。今のキャパシティには対応できているとしても、キャパシティを広げられなければ成長が無くなってしまう。


生産性向上というと、今までは労働時間の削減が目的とされることが多かったが、Withコロナ期においては、診療内キャパシティの最大化を目的とすべきである。


診療内キャパシティの最大化にはいくつかの考え方があるが、基本的なものを紹介したい。売上方程式というマーケティングでの取組を考える際の基本式を用いたものである。


売上 = ①患者数 × ②来院回数 × ③診療単価


①×②によって、対応できる診療受付数が算出できる。仮に自院の診療キャパシティが1000件だとすると、①患者数250件×②来院回数4回となったり、①患者数500件×②来院回数2回となったりする。これらは1日単位、年間単位などで変わってくるので、ここでは便宜上の数値とする。もし、この数値が現在の実績よりも下回っている場合には、③診療単価を向上させることができれば、キャパシティの低下分を補うことができる。


仮に診療数は何とか保てたとしても診療クオリティが下がるなどで診療単価が下落すれば、売上低下となってしまう。ここで考えていく必要があるのが、3つの数字を上昇させるための取組である。


【①患者数】

・1診療あたりの予約時間の短縮化

・職種ごとのタスクシフティングによる獣医師の時間捻出

・デジタル活用による事前事後情報の取得

など


【②来院回数】

・診療ごとの最適な来院間隔の設定

・オンライン診療などの再診方法の多様化

・固定化のための販促手法の整備

など

【③診療単価】

・タスクシフティングによる獣医師以外による売上作り

・診療外項目の売上強化(フードなど)

・効率的な検査体制の構築

など


こういった取組である。

2021年に向けて診療内キャパシティの最大化に取組んでいただきたい。


2020年10月16日金曜日

コロナ禍でのコミュニケーション

 北野です。

今回は院内でのコミュニケーションについて考えてみたい。


コロナによってソーシャルディスタンスや3密回避が求められるようになった。これは、飼い主様などの対外的な部分だけでなく、対スタッフやスタッフ間においても必要となっている。


昼食も距離感を空けたり、個々が別室で食べたりも必要になるし、新人歓迎会や忘年会などの集合型行事も行いにくい。


常時マスク着用のため、相手の表情も見えにくいので、何を考えているのか、喜怒哀楽も見えにくいし、本心も見えにくい。


何より、飲ミュニケーションのような、じっくり相手と向き合う機会が大きく減っている。



そのため、ソーシャルディスタンスのような物理的な距離感だけでなく、相手との関係性のような心の距離感というようなものが気になるようになってきている。


これは、院長から見ての対スタッフだけでなく、スタッフからの対院長やスタッフ間という場面でも発生している。一体感を作りにくい状態とも言えるだろうか。



これを少しでも解消するヒントとして、


コミュニケーション

 頻度 × 深度 × 速度 × 精度


という、コミュニケーションの方程式を紹介したい。


・頻度

→ どれくらい頻繁にコミュニケーションできるか?


深度

→ どれくらい深く相手を知ってコミュニケーションできるか?


速度

→ どれくらい速くタイムリーにコミュニケーションできるか?


精度

→ どれくらい的確に精度高くコミュニケーションできるか?


というものである。


コロナによって、深度と精度に関わる部分への影響が大きい。相手との距離感を何となく詰めにくくなっているからである。


また、ミーティングなどをしにくくなったなども考慮すると、頻度や速度への影響もあるだろう。



これらをどう解消していくかが求められる。


解決策としてはいくつかあるが、まず前提として皆が同じ方向を向ける機会を設けたい。全員を同じ土俵に乗せるためである。


会員様の中には、病院方針発表会や総会などと、通常のミーティングよりもしっかりした形式で、自らが所属する組織が何を目指しており、何を求められているかなどをスタッフに伝える場を設けている。


そして、その中で指標となる数値を伝えたり、これからの行動計画などを伝えたりしている。


このようにコミュニケーションの土台を作り、共通の話題を作り、それを基にコミュニケーションを行っていく。


今までは個対個によるマネジメントも多かったが、今はそれが行いにくい以上、個対全体というイメージを強く持つ必要がある。


そのためには、病院全体で情報共有やナレッジシェアができるように、ビジネスチャットなどの時代に合わせたコミュニケーション手段も準備することも必要となる。


みんな何となく不安。

これは院長もスタッフも飼い主様も皆が同じ。


そんなタイミングだからこそ、今まで以上に強い組織になれるタイミングでもあると感じる。


ぜひ、コミュニケーションの在り方についても考えていただきたい。

2020年10月9日金曜日

新しい診療様式

北野です。

ハンドメイド化粧品・バス用品を販売するLUSHが試験的な取り組みを始めたと話題になっている。店舗入り口には、ピンクとグリーンのリストバンドが置いてあり、いずれかを選ぶことができる。

これは、グリーンは「一人でゆっくりみたい」、ピンクは「相談したい」というように、「どちらの接客を望むか?」という意思表示を行えるものである。

新しい生活様式に則した、接客の有り方を見直すための試験的な取り組みとのことである。人と人との接触に制限が出る中で、顧客の希望する店側との関わり方が変化している。従来のように長く丁寧にという接客を求める方もいれば、そうでない方もいる。むしろ、極力接触を減らしたいという方のほうが多いかもしれない。

 

人医療は3分診療と揶揄されていたように、外来においては医療従事者と患者との接触がもともと短い傾向にあった。しかし、動物病院においては、患者満足度のためにという点で、しっかり丁寧に長く、というスタイルが善であるという風潮がある。

 

3密対策、待ち時間対策、予約制の導入などによって診療のキャパが制限されることになった。従来から言われている働き方改革は進みそうであるが、経営面を考慮すると、限られたキャパの中で診療を最大化することが必要になる。

 

売上を因数分解すると、売上 = 患者数 × 来院回数 × 単価となるが、空間的・時間的キャパの制限がかかる以上、1日あたり患者数の天井は決まってくる。新規も獲得しつつ、既存患者の診療もとなると、患者数×来院回数で示される「数」という点をどう効率化・最大化するかを真剣に検討しないとならない。

 

このように考えると、1日あたりの患者数を最大化するためには、1診療あたりの時間をどれだけ満足度を下げずに短縮できるかが課題となる。ある会員様では新患・再診問わずに、今回の治療に関してどこまでの範囲・内容を求めるかを問診段階で聞いているのだが、その結果、診療時間の短縮だけでなく、診療単価も増加することとなった。

 

これは、飼主様の要望を予め知ることが出来たことで、臆せずに検査や積極的な治療の提案が出来るようになったことが要因であると考えられる。さらに定着率も高くなっており、診療における満足度の向上も見て取れる。

 

こういった事例を踏まえると、顧客の意図である、「今日は“どういうつもり”で来たか」ということをできる限り正確に把握することが効果的であることが分かる。

 

真面目な病院様ほど、1診療に時間をかけることが多い。しかし、今の消費者のマインドは決してそれを善と捉える方ばかりではない。むしろ逆効果になることもあり得る。

新しい診療様式として、ぜひ始めていただきたい。

2020年10月4日日曜日

スコアキーピングメソッド

北野です。


10月に入り、秋健診などのキャンペーンが始まっている。


2回の健康診断も定着しつつあり、ルーチンとして受診される方も増えてきた。より受診率を高めるために、こういったキャンペーンを行う際に、飼い主様とスタッフに動いて貰う取組を紹介したい。


スコアキーピングメソッドという手法がある。これは、主要な要素を点数化してゲーム感覚で楽しんでもらう手法である。


そもそもキャンペーンで行う健康診断などは、

症状が出ているなどの解決すべき課題があって受診するものではない。そのため「行かなくてはならない」といった、行動を促進するマインドが働きにくいものとなる。


意識レベルが高い方は「行こう」というポジティブなマインドが働いての受診となるが、通常は行くこと自体が手間というネガティブなマインドであることが多い。


そのため、このネガティブなマインドをポジティブな状態に変化させる必要がある。このポジティブな状態に持っていくためには、楽しむということがポイントである。これにはゲーム感覚を持たせることが最も手っ取り早い。


分かりやすい例としては、小学生などが夏休みに参加するラジオ体操などがある。朝早く起きて参加するモチベーションを持たせるために、運営者側はスタンプカードなどで行動が貯まる状態を作る。この貯まるということが楽しみとなり行動を継続させる。


健康診断などでも同様で、症状や年齢、過去の既往歴、過去の健診の受診回数などいくつかの要素を組み合わせて点数化できる仕組みを作る。点数化されることで飼い主様の中では、健診がネガティブなものからポジティブなものへと変化させるきっかけを作っていく。


また、スタッフにも同じことが言える。そもそも売り込みが苦手なスタッフさん達には、健診のおすすめ自体に抵抗がある子も多い。そのため、健診への声かけ回数などを点数化し、競わせるもしくは全員での合算数の推移などを見せて、ゲーム感覚に置き換えていく。


このように、ネガティブなマインドが働きやすいものを推進していくためには、結果を求める前にまずはポジティブなマインドに変化させるきっかけを作ることが必要となる。


点数化など、何らかのスコア化にすることでゲーム感覚を持ってもらうとポジティブなマインドになりやすい。


ぜひ主要な要素をスコア化できるよう、考えて頂きたい。