2019年7月19日金曜日

動物病院における働き方改革の本質とは

北野です。

世の中で「働き方改革」という話題がよく聞かれるようになりました。
今年の4月より働き方改革関連法が施行され、有給取得の義務化、
来年からは残業時間の上限規制がスタートします。(大企業は今年からスタート)

この働き方改革の本質は「生産性向上」であるべきなのですが、
労働時間・日数を削減することにのみ注目が集っている点が懸念されます。
「生産性向上」とは、従業員一人一人が生み出す価値(売上)を向上させることです。

つまり、「働き方改革」とは、
「今ある経営資源(人・物・金・情報)で売上を維持・向上しつつ、
労働時間・労働日数を適切化する」
というのがあるべき姿でしょう。

もちろん法律に則った経営を行うことは必要であり、
環境に不備がある場合には、是正する努力を行うことは急務でありますが、
上記概念を基本とすることは念頭に置いておいてください。

こういった中で動物病院においての大きな方針として、
(1)診療業務の役割分担
(2)バックヤード業務のシステム化
の2つがあると考えています。


(1)診療業務の役割分担

人の医療機関においては、眼科・耳鼻科などは外来で1日200人以上の診療を1ドクターで実施しています。これが可能になっているのは、師の外来診療効率を高めるために診察以外の部分を全て他職種に割り振るということです。

一般的な診療の流れとしては、①受付、②問診、③診察、④検査、⑤処置、⑥説明、⑦薬準備、⑧会計となるでしょう。この流れにおいて2つの視点で役割分担を行っていきます。

1)獣医師でなくとも出来ることは?

最も重要なのが、獣医師を軸に置いた役割分担です。診療業務を効率化するためには、「獣医師しかできないことを獣医師が行う」、「獣医師でなくともできる業務を看護師などの他職種が行う」ということが理想的です。

上記の流れですと、③診察と④検査の一部、⑤処置、⑥説明、がこれにあたります。
動物看護師の国家資格がスタートすると、④⑤などの医療行為部分は動物看護師が代替できるようになるかもしれません。直接的に売上を作ることもできるようになるため、生産性向上に寄与するでしょう。国家資格の今後の動向に注目しつつ整備を進めたいところです。

また、健康診断やデンタルなどの推奨・カウンセリングなどの医療行為でない部分については、国家資格を持っていない看護師へ移行することも考えられます。これについては現在弊社でもモデルケース作りを行っており、秋の健康診断からスタートする予定です。

歯科医院では、歯科助手がインプラントなどの自費治療のカウンセリングを歯科医師に代わって行うトリートメントコーディネーターと言われる役割があります。
同様の役割を動物病院内でも作れるよう、説明用スライドの作成、トークスクリプトやトークマニュアル、カウンセリングフローチャートなどを準備していっています。
またセミナーや経営レポートなどの色々な場でご報告して参ります。


2)人でなくてもできることは?

2つ目の視点は人から機械・システムに役割を移していくことです。①受付、②問診、⑧会計などにおいては人的対応ではなく、自動受付機の導入、予約システム導入による問診の簡素化、自動会計機などの機械・システムによる対応も可能になってきました。

導入コストはかかりますが、人件費や教育コスト、採用コストなどを考慮すると、2~3年でコスト吸収が可能ですし、人に依存しにくくすることで院長先生の採用や教育におけるストレスも解消できると思います。

また、バックヤード業務である、在庫管理やシフト作成など、特定スタッフの経験値に依存しがちな業務もアプリやソフトウェアなどに代替することも可能になってきました。こういった正確性を求められる業務かつ定型的な業務においては、人よりも機械・システムの方が適していると言えるでしょう。



こういった点を見ていくと、従来型のモデルでは限界があり、新たな考え方や価値観に基づいた経営を行うことが必要になると言えます。新しいことを導入する際には必ず現場の反発が出てきます。しかし、人手不足・教育コストなどの中長期的な視点でみると、早期の導入におけるメリットはとても大きいと感じます。

優秀な若手ほど、無駄なことはしたくない、自分のスキルを向上できる環境に身を置きたいと考えています。役割分担を進めることで本来業務に集中できる環境を用意していくことができれば、採用における優位性も高まり、結果として採用にも成功することにも繋がります。

是非、出来ることから始めていただきたいと考えています。