2021年2月13日土曜日

今後の採用についての考察

 北野です。

全国各地で採用活動を行っているが、例年よりも苦戦している病院が多い。

新型コロナ渦にもあるため例年との比較はできないが、今後の取組を考える上で考察を行いたい。


新卒採用は例年よりも苦戦した感はあるが、応募があるところには応募もある。獣医学生1人あたりの実習数の減少によっての応募者数減である可能性が最も高いといえそうである。実際に、昨年はGWから夏休みに予定していた実習が軒並み延期となり、そのまま中止となったケースも非常に多かった。首都圏以外の大学の多くが、他府県への移動自粛を求めたり、移動後戻ってきてからの一定期間の自主隔離を求めたことも大きく影響しているといえる。


今年に入ってからも一部の大学では同様の措置を取っているところもあり、実習の早期化や延期の影響も出始めている。


こういったことから、新卒においても人材紹介への登録がさらに増加することも予想される。現地への実習がかなわないことも多く、自分の足で見比べるということが難しい状態でもある。こう考えると、希望を伝えればエージェントが希望に近い病院を代わりに探してくれるサービスは現実的に最も有益なサービスとなりえる。一方で人材紹介経由の採用は採用病院側に手数料が発生することから、二の足を踏む学生が多いことも予想される。


このあたりは採用病院側が手数料をどうとらえるかによって変わってくるが、今後新卒採用における人材紹介会社利用は増加傾向になってくると考えられる。


利用しない方が病院・学生双方にとって有益な場合もある。そのため、病院サイドとしては、新卒採用においては、より自院情報の拡大発信と遠隔コミュニケーション、緩やかな繋がりの保持というあたりが重点的な取り組みになると考えている。



中途採用においては、例年よりも動きが沈静化している印象を受けている。最も中途市場で動きやすい年代である20代、30代の状況について見てみると、農水省の平成30年の調査資料では、20代では男性49%女性51%、30代で男性55%女性45%とほぼ男女比が同等になっている。獣医師の男女比は全体で男性68%女性32%となっていることを考慮すると、女性比率が非常に高いのが特徴である。また、30代が最も小動物臨床に関わる人数が多い。


ちなみに、小動物臨床に従事する獣医師総数は平成28年15,330人、平成30年15,774人と微増している点を見ると、小動物臨床に携わる人数が減少しているわけではないことがわかる。


これらを簡単にまとめてみると、

・獣医師総数は微増傾向

・獣医師数が最も多い年代は30代

・中途採用の主となる20代・30代では女性比率が約50%程度となっている


という傾向が分かる。

では、中途採用のメインボリュームとなる20代・30代の内訳を見てみると、


20代男性 14.6%

20代女性 15.0%

30代男性 38.4%

30代女性 32.0%

となっている。


厚生労働省の調査によると、平均初婚年齢は夫 31.1 歳、妻 29.4 歳、第1子出生時の母の平均年齢が30.7歳となっており、中途採用市場の約1/3を占める30代女性は結婚・出産等の大きなライフイベントを迎える者が多い世代であるともいえる。


中途採用での転職意向の低下や中途採用市場の縮小の一員はこういった点にあるとも考えられる。また、感覚的には20代の男女ともに一旦臨床に入ったものの、就職後数年で他職種に転職する傾向が多くなっているとも感じる。


このようにみてみると、今後ますます中途採用市場は縮小する可能性も高く、新卒採用に力を入れるという攻めの側面と、既存スタッフの定着及び職場復帰のしやすい環境整備がますます重要になると考えられる。


これらはあくまでも統計数字からの推測と現場感による考察になるため、実際と乖離している部分もあるかもしれない。それでも、ここ数年の採用難を考慮すると採用一辺倒の方針のみに頼ることは危うく、新しい体制作りが急務であると考えている。