2020年10月9日金曜日

新しい診療様式

北野です。

ハンドメイド化粧品・バス用品を販売するLUSHが試験的な取り組みを始めたと話題になっている。店舗入り口には、ピンクとグリーンのリストバンドが置いてあり、いずれかを選ぶことができる。

これは、グリーンは「一人でゆっくりみたい」、ピンクは「相談したい」というように、「どちらの接客を望むか?」という意思表示を行えるものである。

新しい生活様式に則した、接客の有り方を見直すための試験的な取り組みとのことである。人と人との接触に制限が出る中で、顧客の希望する店側との関わり方が変化している。従来のように長く丁寧にという接客を求める方もいれば、そうでない方もいる。むしろ、極力接触を減らしたいという方のほうが多いかもしれない。

 

人医療は3分診療と揶揄されていたように、外来においては医療従事者と患者との接触がもともと短い傾向にあった。しかし、動物病院においては、患者満足度のためにという点で、しっかり丁寧に長く、というスタイルが善であるという風潮がある。

 

3密対策、待ち時間対策、予約制の導入などによって診療のキャパが制限されることになった。従来から言われている働き方改革は進みそうであるが、経営面を考慮すると、限られたキャパの中で診療を最大化することが必要になる。

 

売上を因数分解すると、売上 = 患者数 × 来院回数 × 単価となるが、空間的・時間的キャパの制限がかかる以上、1日あたり患者数の天井は決まってくる。新規も獲得しつつ、既存患者の診療もとなると、患者数×来院回数で示される「数」という点をどう効率化・最大化するかを真剣に検討しないとならない。

 

このように考えると、1日あたりの患者数を最大化するためには、1診療あたりの時間をどれだけ満足度を下げずに短縮できるかが課題となる。ある会員様では新患・再診問わずに、今回の治療に関してどこまでの範囲・内容を求めるかを問診段階で聞いているのだが、その結果、診療時間の短縮だけでなく、診療単価も増加することとなった。

 

これは、飼主様の要望を予め知ることが出来たことで、臆せずに検査や積極的な治療の提案が出来るようになったことが要因であると考えられる。さらに定着率も高くなっており、診療における満足度の向上も見て取れる。

 

こういった事例を踏まえると、顧客の意図である、「今日は“どういうつもり”で来たか」ということをできる限り正確に把握することが効果的であることが分かる。

 

真面目な病院様ほど、1診療に時間をかけることが多い。しかし、今の消費者のマインドは決してそれを善と捉える方ばかりではない。むしろ逆効果になることもあり得る。

新しい診療様式として、ぜひ始めていただきたい。