2021年7月30日金曜日

飼い主様視点

 北野です。

動物病院がマーケティング活動を行う上で失敗しがちなのが、飼い主視点の欠如である。


飼い主が知りたいことを発信するのが飼い主視点であるのに対し、病院が伝えたいことを発信するのが病院視点となる。


技術力の高い病院ほど、病院が伝えたいことをを発信し続け、本来の技術力を飼い主様に提供できないことが多い。


一方でマーケティングの上手な病院は、飼い主様が知りたいことを「主」として発信し、その中に「従」として病院の伝えたいことをを織り交ぜて発信する。


なお、様々な会員病院様で行った飼い主アンケート調査でも、自院の実績や技術力は自院の飼い主様にも知られていないことがほとんどであった。


これらを踏まえると、

・飼い主様視点で情報発信を行う

・順番は既存飼い主新規飼い主

・浸透には時間がかかるので、あらゆる媒体で発信し続ける


ということが必要になる。


本来持ち合わせているポテンシャルを発揮仕切れていない病院は、情報発信の不備に原因がある。


この時期に今一度、情報発信のあり方を考えて頂きたい。

2021年7月26日月曜日

孤独を防ぐには

 北野です。

新卒入社スタッフの退職についての相談を、経営相談でお聞きすることが多い。


売上や来院数は好調で、人手が不足がちな病院様に多い傾向にある。


新卒スタッフ本人の問題もあるが、病院側での受入体制不足であることが多い。「最近の若い者は・・・」と言いたいところではあるが、相手を変えるよりも、まずは病院が変わることをお勧めしている。


受入体制の要点は、

・全体が見える仕組み

・手順を学べる仕組み

・タイミングにとらわれない仕組み

が重要となる。



どこまで自分がやるべきか、覚えるべきかなど、全体像が見えないと不安になる。ゴールの見えないマラソンをしている感覚に近いだろう。


また、教えてもらう、という感覚を持つ子が多く教えてもらえないと不満になる。また、空気を読むために質問を自らしてくる新人も少なくなっている。


こういった特性を持つスタッフを従来のやり方で放置していると、孤独感や疎外感を感じ、居場所を見つけられなくなって辞めていく傾向にある。



これらを防ぐには、

・業務の全体像を示し

・手順が分かるマニュアルを用意し

・いつでも見られるようにする


ということが必要となる。


つまり、先輩などの人以外に拠り所を作ってあげることが必要となっている。



求人を出す病院が年々増えており、採用難易度が高まっている。


採用力を高めるだけでなく、受入体制の見直しもはかっていただきたい。

2021年7月16日金曜日

動物病院におけるリスク管理

 北野です。

新型コロナウイルスの猛威により、
リスク管理の重要性に改めて気付く方が多い。

そのような背景で、
第77回SNC経営セミナーとして、
「もしも・・・」に備えるリスク管理セミナーを
急遽開催することにした。

今回は特別ゲストとして、社会的インフラに欠かせない
電力供給面からのリスク管理として、
関西電力の方にご講演もいただいている。

動物病院において特に参考となるような、
人の医療機関での取組をご紹介いただいている。

会員の方はぜひご覧いただきたい。


そんなセミナーから、
動物病院におけるリスク管理のポイントをご紹介したい。

ポイントとしては大きく5つあり、

① 事前シミュレーション
② 指針の作成
③ 指示系統
④ 内部での情報共有・蓄積
⑤ 外部への情報公開 

これらを予め定めておくことが必要となる。

① 事前シミュレーション

「もしも自分の身近で起こったら・・・」
そんなことを想定してあらゆるイメージをシミュレーションしておく。

多くのリスクは既にだれかがどこかで経験しているものであり、
それを知ろうとするか、しないかの差で、
現場での初期対応が大きく変わる。

テレビの中の出来事として他人ごとと捉えるか、
自分だったらどうしよう?と自分ごとと捉えるか。
これにより大きく変わってくる。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
という言葉があるが、
リスク管理は歴史を振り返れば様々な知見を得ることができる。

歴史を知ることの重要性を再確認していただきたい。


② 指針の作成

現場で速やかに行動するためには、
全員が参照できる指針が必要となる。

誰が何をやるのか?
誰が決めるのか?
判断基準は何か?

全てをトップの判断を待っていては初期対応が遅れるし、
トップにかかる負担は果てしない。

今回の新型コロナウイルスの初期対応も、
弊社から会員様にお送りしたガイドラインによって、
スムーズに運営できたというお声も多数いただいた。

指針はトップの頭の中ではなく、
誰もが目で見て確認できることが必要である。

今こそ、指針を書面化することにチャレンジしてほしい。


③ 指示系統

リスク発生時にトップが常に現場にいるとは限らない。
貴院には自分の代わりに判断するメンバーはいるだろうか?

能力ではなく、ルールとして決めておくこと。
指針があれば、まずはその通りに進めることができる。

しかし、現場で指揮をとるメンバーがいない限り、
現場には不安が充満する。

指示系統の優先順位を明確にするだけで、
スタッフが安心できることを知っていただきたい。


④ 内部での情報共有・蓄積

リスク対応は非常に労力のかかるものである。
そのため、解消すれば一息つきたい気持ちも分かる。

しかし、経験ではなく歴史を大切にするのであれば、
対応方法を共有し自院の財産として蓄積すべく、
明文化・データベース化することが必要となる。

スタッフ個々にとっては所見でも、
病院にとっては数回目のこともある。

病院という組織を運営している以上、
社会的責任も伴っている。

飼主様の目はますます厳しくなっていく。
従業員は退職により変わるかもしれないが、
飼主様は変わらない。

また同じことを・・・にならないよう、
内部での共有・蓄積を進めていただきたい。


⑤ 外部への情報公開 

SNSが発達し、情報が溢れる時代では、
自院の知らぬところで情報が先走ることがある。

良いことも悪いことも含め、
情報公開の姿勢により、
信頼を勝ち得るか、失うかが決まってくる。

組織の姿勢について考えていただきたい。


2021年7月9日金曜日

事業継承とM&A

北野です。

ここ数年で事業継承やM&Aなどの出口戦略の相談が増えている。

特に院長が60代以降になると、ご自身の引退も見据えた相談である。


弊社としても長年のお付合いの中での最後のサポートとなるか、

代替わり含めてのサポートとなるか、

様々な形式でのサポートを行っている。


今の状況を簡単に整理すると、

(1)院内継承

 ・実子など親族に継承

 ・勤務医などに継承

(2)院外継承

 ・第3者となる個人に継承

 ・第3者となる法人に継承


という方法がある。

従来は親から子へという実子への院内継承が主となっていたが、

外資系グループ、ファンド、他業種からの参入など、

一定の資本力を有する第3者となる法人への継承も視野に入ってきた。


ただし、継承といってもその形式は様々で、

事業譲渡や株式譲渡などの譲渡方式の違いや、

継続勤務か引退かなどの違いもある。


多くの院長が継承=引退と捉えておられる方が多い印象であるが、

院内継承でない限りは当面は勤務する必要が多くなっている。


そのため、継承を考慮するにあたり何を優先するか?

という優先順位を考えておく必要がある。


・売却することで一定金額を得て老後の資金にしたい ⇒ お金

・グループ傘下に入ることで経営ストレスから逃れたい ⇒ 時間とストレス

・グループ傘下に入ることで発展のためのサポートを受けたい ⇒ サポート


などでなる。


ただし、原則として院外継承を行う場合、

院長が現場を退く場合には、価値算定価格が低くなる傾向にあるため、

お金を優先する場合には早めの承継も必要になるだろう。


また、院内に残る場合は、

決裁権の低下、売上目標の達成など、

今まで感じてこなかったストレスを感じるようになる

可能性があることも注意しておきたい。


このように、事業継承やM&Aにはメリットとデメリットがあり、

それをきちんと整理して判断しないと後悔することになるだろう。


我々も実際に様々な買収側と会うことで、

様々な情報を仕入れて会員様に還元していき、

より良い出口戦略のサポートを行っていきたいと考えている。


2021年7月2日金曜日

病院の4タイプ

 病院の4タイプ


北野です。
経営相談で多いのが、
「この先どういう方向性で病院経営を行うか?」というものである。


・事業継承やM&Aで売却するべきか?
・人を増やすか減らすか?
・規模拡大を目指すべきか?

など様々である。


我々は病院の持続可能な発展をサポートすることを生業としているため、基本的には僅かであっても成長を期待できる取組についてご提案している。

そういった中で病院を4タイプに分けての方針検討をご提案している。

切り口としては、来院と新患の年齢層で高齢・若齢のいずれが多いかをもとに分類したものとなる。


【タイプ1】来院:高齢 新患:高齢
【タイプ2】来院:高齢 新患:若齢
【タイプ3】来院:若齢 新患:高齢
【タイプ4】来院:若齢 新患:若齢


病院規模にもよるが、最も売上上昇率が高いのがタイプ1で、
売上に苦しみ始めているのがタイプ4となっている傾向にある。

自院がどのタイプかを把握し、そのタイプに留まるのか、
別のタイプに向かうかによって、取組の優先順位が変わってくる。

高齢・若齢のいずれを集めるかによって情報発信の内容や媒体も変わってくるし、
高齢動物対応を行うには医療機器などの投資判断が必要になる場合もある。

どのタイプが正解かというわけではない。
あくまでも自院の現状と構想に基づいて向かうべき道標を持っておくことをおススメしている。

自院の現状を検討する際に参考にしていただきたい。