2020年2月28日金曜日

上手な料金値上げの行い方

北野です。

料金の値上についてのご相談をよくお受けします。
特に、「何」を「いくら」値上げすれば?
というものが多くあります。

この点について現場で実際に行なっている取組をご紹介します。

1)何を値上げするか?

基本的に動物病院は自由診療のため、
何を値上げしようと病院サイドの自由です。

ただし、値上げによるメリット・デメリットを考慮する必要があります。

ある程度、価格と供給は反比例することになるため、

 メリット:売上(収益)が上がる
デメリット:数が減る(可能性がある)
      クレームが出る(チクチク言われる)

という特徴があります。

そのため、

値上げする診療項目(○○検査など)を選定する際には、
1)値上げして売上へのインパクトがあること
2)値上げしても需要が維持できること
3)値上げしても価値を感じられること

などを考慮する必要があるでしょう。

これらを踏まえると、

1)インパクト
→ 年間における件数が多い診療項目

2)需要
→ 年間における件数が多く、かつ前年よりも増加している診療項目

3)価値
→ 他院に無い自院での強みとなる診療項目

という3つの視点で探していきます。


実際には、
2017年と2018年、2018年と2019年という
過去3ヶ年の件数・売上データにて、
前年比伸び率、増加件数などを比較して
上記の1)〜3)の項目を見つけていきます。

売上が上がっている、下がっているにかかわらず、
何らか伸びている診療項目が必ずありますので、
それが値上げすべき診療項目となります。

この作業を行なうと、
思わぬ項目が見つかることがありますので、
隠れた自院の長所を見つける点でも取り組んでみてください。


2)いくら値上げするか?

まず、原則として原価割れしているものは無いかを検討します。
当然のことではあるのですが、
開業以来料金を変えていないという病院様では、
特に薬価にて原価割れをしていることがよくあります。
この点は基本です。

値上げする際の切り口としては、
1)人件費率、2)所用時間という
2つがあります。

1)人件費率

人件費率からのアプローチでは、
総額人件費率の上昇分を目安にします。

最低賃金が毎年23%程度上昇していることを考慮すると、
最低でも23%程度は上昇させたいところです。

ただし、全項目を一律に上げるのではなく、
単価ごとに値上げ率をミックスさせて、
トータル上昇額での調整を行います。

2)所要時間

トリミング部門などにおいては、
実際の所要時間を加味した値上を行うことが望ましいと言えます。

例えば、下記のような状況の場合、

A)所要時間2時間 ・・・ 4000円(2000/時)
B)所要時間3時間 ・・・ 5000円(1666/時)

B)の方が売上は高いですが、
1時間当たりの時間単価は低くなります。

時給1500円のスタッフがB)を行った場合の
病院の利益は166円しかありません。

もちろん技術向上による時間短縮は必須ですが、
値付けの問題も検討しなければなりません。

地域相場や競合相場も考慮すべきではありますが、
トリマースタッフの平均時給から利益を上乗せした
1時間あたりの時間単価を算出し、
それに所要時間を掛けて料金を算出するということが必要です。

もちろんこれらは理屈上の数値となりますので、
単に値上げするだけでなく、新コースを作るなどして、
上手に価格変更を行うことで実現することができます。


実際に上記のような作業を行なうと、
自院の無駄や改善点が見えてきます。
ぜひ、価格改定にチャレンジしていただきたいと思います。




2020年2月22日土曜日

個人が情報発信する時代


北野です。

新型コロナウイルスに関する影響が様々なところで出ています。
皆様も予防などを含め、お身体にはご自愛ください。

先日、YouTubeにてクルーズ船の船内の様子を告発する動画が公開され、
全世界的に波紋を呼ぶこととなりました。

私は、内容に関して意見コメントする立場にはありませんので、
差し控えますが、これを受けて感じた点をお伝え致します。

今回の動画については内容の衝撃さ・タイムリーさという点が通常とは異なるのですが、
その広がり方の速度感がこれまでになないものであったと感じています。
従来と異なり、全てが個人のTwitterFacebookなどのSNSでの投稿が起点となり爆発的に広がっていった点が、現代っぽい情報拡散だなと感じました。

海外での事例として、グレタ・トゥーンベリさんというスウェーデン在住の環境活動家の方がいます。彼女は15歳であった2018年に「気候のための学校ストライキ」という看板を掲げる活動を開始しました。この活動はSNSなどでシェアされ続け、1年後には世界中で100万人規模の学生ストライキに発展しました。昨年はCOP25での講演を行うまでになっています。

取り上げられている問題は、世界的なインパクトがある内容ではありますが、従来は一般の人には知られていなかった1個人の意見・課題提起がSNSを通じて加速度的に広がりやすくなっています。特に発信段階では影響力のある存在ではなかったものが、賛同者が集まり発信者の影響力が強くなっていくということもあります。

数年前にコンビニや飲食チェーン店でアルバイトスタッフがSNSに投稿した動画が炎上し、営業停止などに発展したケースもありました。SNSによる企業への影響は、計り知れないものになっているでしょう。


日本相撲協会やサッカーのプレミアリーグなどスポーツの世界でも所属する選手へのSNS利用禁止の議論が度々話題になりますが、一律に禁止することは時代にそぐわない対応と言えるでしょう。

むしろ企業・団体として、SNSにどのように向き合い・付き合っていくかを考えていく必要があるでしょう。社会的に透明性が求められる時代になっており、企業側に有利な情報のみを流し、不利な情報を隠すということへの反発がより強くなっています。

組織形態の1つでティール組織というものが注目され始めているのも、企業経営における情報の透明性が求められていることの一端だと感じます。

もちろん全ての情報を伝えることが常に正しいとは言えません。適切なタイミングで適切な情報を流すような情報統制が重要な場合もあるでしょう。情報は伝わる側のレベルによってその受取り方が変わるからです。

ただし、1個人が発信した情報が時流に沿えば、瞬く間に世界中に知れ渡る時代になっているのも事実です。

病院経営においては、院内外で様々なことが起こります。SNSに限らず情報発信リテラシーを病院側も身に着ける重要性をより感じます。


2020年2月14日金曜日

シニア犬・シニア猫時代に注意すべきこと

北野です。

動物の高齢化に伴い、
治療や診断、手術を目的とした受診が増加しています。

もうすぐフィラリアシーズンが始まりますが、
予防よりも治療メインの飼い主様が多い病院もあるでしょう。

また、来院する動物の病気が複合的だったり、難治性だったりという声もよく現場で伺います。

病院規模が一定以上になると、飼い主様からの期待値も高くなる傾向があり、トラブルになり得るケースも増えてきます。

ここ数年で会員動物病院様で起きた飼い主様とのトラブルを振り返り、現在進めているトラブル防止策がいくつかありますので、概要をお伝えします。

1)診療内容の記録

問診票やカルテなどの保管や、記載は当然ながら重要ですが、いわゆる言った言わないという証明のしにくいトラブルがあります。

こういったケースに対応するため、防犯目的も含めて院内に監視カメラの設置を進める病院様もあります。特に診察室内においては、録画だけでなく録音機能付きのカメラを導入することにより、診療内容の記録を行うことも可能です。


2)裏同意書の準備

トラブルのいくつかは、説明内容の不備やミスコミュニケーションによるものではなく、説明した相手が手術同意における最終決定権者ではないことで発生したということがありました。

奥様が連れてきていて旦那さんがクレームを言ってくる、娘さんが連れてきていてお母さんがクレームを言ってくる、などのケースです。

最近はシッターさんが連れてきていているというケースも増えてきています。

こういった場合には、説明内容を工夫したりという病院側の努力による解決は難しいと言えます。むしろ、最終決定権者である方に情報が伝わり、最終決定権者の同意を取れるかが重要です。

そういった場合のために、最終決定権者への直接的な説明を行った上での同意がない限り手術は受けられないという旨のこれまでとは違う裏同意書の作成を進めています。

トラブルになりそうだな、と思ったら案の定ということもよくお聞きしますので、身を守る術を持つ必要性が高まってきました。


これらのようなトラブルは飼い主様との訴訟リスクだけでなく、従業員のメンタルリスクにも影響してきます。

経営基盤を高めるためにも、しっかりと対策しておきましょう。