2019年7月26日金曜日

定着率を高めるには

北野です。


スタッフの定着率についてのご相談をよくお受けします。

まずスタッフ全体での定着率を見るのではなく、いくつかの層に分けて捉える必要があります。

組織論に2:6:2の法則というものがあります。
上位2割、中位6割、下位2割に分けられます。

定着率を全体の10で捉えるのではなく、
上位、中位、下位のいずれかを見る必要があるでしょう。


個人的には上位2割の定着率が高い病院は相対的に全体での定着率が高い傾向にあり、下位2割までの定着率を気にする病院ほど、全体での定着率が低い傾向にあると感じます。

この上位2割は何らかの形で病院の幹部クラスになっていることでしょう。つまり、この上位2割をある意味えこひいきし、定着させるかが重要だと考えます。


逆に全体の定着率を考えれば考えるほど、チクハグな取組となり、全ての層での定着率が低下することになります。

それは、上位、中位、下位それぞれに属するメンバーのモチベーションの源泉が異なり、下位になればなるほど些細な内容になるからです。

上位スタッフのモチベーションの源泉は成長や仕事のやりがいなど、組織の発展にも関わる内容であることがほとんどです。

つまり、全体を気にするあまり、下位スタッフに引っ張られてしまい、上位スタッフのことがおざなりになってしまいます。

この状態が続くと、上位スタッフの退職に繋がり、さらに中位、下位スタッフの退職が連鎖的に起こることがあります。

それは、上位スタッフは中位、下位のスタッフから個人的に慕われていることも多いからです。


こういったことから、定着率を高める取組においては、上位スタッフに対する取組をどの程度できるかによるでしょう。

経営サイドからすると、スタッフの退職可能性はとても恐いものでもあります。

ただし、優先順位をキチンと行わないと結果として全体に影響が出ることになるでしょう。


しっかりと優先順位を考えて取り組んでいただきたいと思います。

2019年7月19日金曜日

動物病院における働き方改革の本質とは

北野です。

世の中で「働き方改革」という話題がよく聞かれるようになりました。
今年の4月より働き方改革関連法が施行され、有給取得の義務化、
来年からは残業時間の上限規制がスタートします。(大企業は今年からスタート)

この働き方改革の本質は「生産性向上」であるべきなのですが、
労働時間・日数を削減することにのみ注目が集っている点が懸念されます。
「生産性向上」とは、従業員一人一人が生み出す価値(売上)を向上させることです。

つまり、「働き方改革」とは、
「今ある経営資源(人・物・金・情報)で売上を維持・向上しつつ、
労働時間・労働日数を適切化する」
というのがあるべき姿でしょう。

もちろん法律に則った経営を行うことは必要であり、
環境に不備がある場合には、是正する努力を行うことは急務でありますが、
上記概念を基本とすることは念頭に置いておいてください。

こういった中で動物病院においての大きな方針として、
(1)診療業務の役割分担
(2)バックヤード業務のシステム化
の2つがあると考えています。


(1)診療業務の役割分担

人の医療機関においては、眼科・耳鼻科などは外来で1日200人以上の診療を1ドクターで実施しています。これが可能になっているのは、師の外来診療効率を高めるために診察以外の部分を全て他職種に割り振るということです。

一般的な診療の流れとしては、①受付、②問診、③診察、④検査、⑤処置、⑥説明、⑦薬準備、⑧会計となるでしょう。この流れにおいて2つの視点で役割分担を行っていきます。

1)獣医師でなくとも出来ることは?

最も重要なのが、獣医師を軸に置いた役割分担です。診療業務を効率化するためには、「獣医師しかできないことを獣医師が行う」、「獣医師でなくともできる業務を看護師などの他職種が行う」ということが理想的です。

上記の流れですと、③診察と④検査の一部、⑤処置、⑥説明、がこれにあたります。
動物看護師の国家資格がスタートすると、④⑤などの医療行為部分は動物看護師が代替できるようになるかもしれません。直接的に売上を作ることもできるようになるため、生産性向上に寄与するでしょう。国家資格の今後の動向に注目しつつ整備を進めたいところです。

また、健康診断やデンタルなどの推奨・カウンセリングなどの医療行為でない部分については、国家資格を持っていない看護師へ移行することも考えられます。これについては現在弊社でもモデルケース作りを行っており、秋の健康診断からスタートする予定です。

歯科医院では、歯科助手がインプラントなどの自費治療のカウンセリングを歯科医師に代わって行うトリートメントコーディネーターと言われる役割があります。
同様の役割を動物病院内でも作れるよう、説明用スライドの作成、トークスクリプトやトークマニュアル、カウンセリングフローチャートなどを準備していっています。
またセミナーや経営レポートなどの色々な場でご報告して参ります。


2)人でなくてもできることは?

2つ目の視点は人から機械・システムに役割を移していくことです。①受付、②問診、⑧会計などにおいては人的対応ではなく、自動受付機の導入、予約システム導入による問診の簡素化、自動会計機などの機械・システムによる対応も可能になってきました。

導入コストはかかりますが、人件費や教育コスト、採用コストなどを考慮すると、2~3年でコスト吸収が可能ですし、人に依存しにくくすることで院長先生の採用や教育におけるストレスも解消できると思います。

また、バックヤード業務である、在庫管理やシフト作成など、特定スタッフの経験値に依存しがちな業務もアプリやソフトウェアなどに代替することも可能になってきました。こういった正確性を求められる業務かつ定型的な業務においては、人よりも機械・システムの方が適していると言えるでしょう。



こういった点を見ていくと、従来型のモデルでは限界があり、新たな考え方や価値観に基づいた経営を行うことが必要になると言えます。新しいことを導入する際には必ず現場の反発が出てきます。しかし、人手不足・教育コストなどの中長期的な視点でみると、早期の導入におけるメリットはとても大きいと感じます。

優秀な若手ほど、無駄なことはしたくない、自分のスキルを向上できる環境に身を置きたいと考えています。役割分担を進めることで本来業務に集中できる環境を用意していくことができれば、採用における優位性も高まり、結果として採用にも成功することにも繋がります。

是非、出来ることから始めていただきたいと考えています。

2019年7月12日金曜日

動物看護師の国家資格決定を受けて

北野です。

2019年6月の国会で、動物看護師の国家資格化が決定しました。
公示から3年以内に施行となるため、2022年~2023年からのスタートとなりそうです。

法案や国会答弁の記録などを確認する限りでは、
まだまだ未確定部分が多く、今後の動向が注目されます。

【参考】愛玩動物看護師法案 提出時法律案 衆議院HPより
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19805018.htm

現段階で未決定かつ動向を注視すべきポイントは下記2点かと思います。

(1)業務範囲

今回の法案を見る限り上記2点に関しての明確な記載はありません。
特に業務範囲については「診療の補助」と記載があるだけで具体的な内容は固まっていません。
今後農水省が管轄して具体的な業務範囲を決定していくようです。

(2)受験資格

また、既卒者の受験資格についても明確な記載がないため注目が必要です。
現在は代表的な資格として統一認定看護師資格がありますが、
この発行団体が国家資格化に向けた活動を行っているため統一認定資格を有していることは
既卒者の国家試験受験資格に関連することが予想されます。

この統一認定資格を受験するための受験資格取得講座の受講は2021年までとなることがHP上に記載されています。
これを受講するためにも条件がありますので、統一認定資格を受験させるためには認定機構に確認されることをお勧めします。

【参考】今後の受験資格取得講座の開催予定 
一般財団法人動物看護師統一認定機構HPより
https://www.ccrvn.jp/jukensikakusyutokukouzagaiyou.html


このように未確定な状態ではありますが、
今回の国家資格化にあたり病院として検討しておくべき点を記載します。

(1)国家資格取得への意思確認

既存スタッフの中で国家資格取得を取得する意思があるかの確認が必要かと思います。
その中で認定資格を有しているのか、いないのかにより対応が変わります。

特に認定資格を有していない場合には、
2021年の最後の認定試験に向けた準備が必要かと思います。

(2)看護師業務の整理

具体的な業務内容は今後決定されていくと思いますが、
・注射
・点滴
・投薬
などは国家資格取得者に解禁されるようになると思います。

そのため、現在の業務の整理とともに、
業務フローの見直しも必要になってくるでしょう。

慢性疾患での点滴処置などは、
動物看護師に任せられるようになると思いますので、
業務フローなどを今から検討していくことをお勧めします。

上手に業務フローを組んでいくことができれば、
診療効率も高まり病院全体の生産性も向上すると考えています。

今後の動向に注目していきましょう。

2019年7月1日月曜日

消費税増税に向けた対応

北野です。

10月からの消費税増税に向けて
現場での準備を進めています。

今回の増税において特に対応が必要なのは、
キャッシュレス消費者還元事業におけるポイント還元制度です。

これは病院での会計時にキャッシュレス決済を行った際に、
購入額の5%がポイント還元される制度です。

【キャッシュレス消費者還元事業】
https://cashless.go.jp/assets/doc/consumer_leaf_introduction.pdf

詳細はまだ決まっていないことも多いのですが、
この制度を動物病院が利用するためには、
病院で使用しているカード決済端末などの会社を通じて、
国へ登録を行うことが必要となります。

この登録には数週間~数か月かかると言われており、
早期に準備を始めないと、増税時に間に合うかが分かりません。

大まかな流れをまとめると


(1)登録決済事業者かの確認

自院が使用している決済端末提供会社が、
本制度に登録されている事業者かを確認する。

登録されていれば(2)へ
登録されていなければ登録事業者への変更を検討する。

※自院で使用している決済端末提供会社がどこか分からない場合は、
 毎月送付されてくるカード決済明細を確認いただくと確実かと思います。


(2)決済端末提供会社を通じて加盟店IDの発行手続き

決済端末提供会社を通じて、加盟店IDの発行手続きを行います。
この手続きが数週間~数か月かかると言われています。
早めに手続きを行いましょう。

対象事業者であった場合には、
下記のようにHP上から手続きができることもあります。

【参考:JCB様のHP例】
https://www.jcb.co.jp/promotion/acq/cashless/


(3)登録審査

自院がキャッシュレス消費者還元事業の加盟店として、
登録可能かを審査されます。
審査の結果、加盟店IDが発行されればOKとなります。


(4)ポイント還元制度を利用したキャンペーンの実施

まだ決まっていないことも多いのですが、
ポイント還元として下記の2種が想定されています。

 1)飼主様が使用した決済サービスのポイントに還元

 2)決済金額の5%相当をその場で値引き還元

上限金額は設定されるのか?その場での値引きは可能か?など
これらは今後、決定されていくことになるでしょうが、
これらを活用したキャンペーンを想定しておくことは重要でしょう。

増税まであと3ヶ月ほどとなりました。
今からしっかりと準備を整えていってください。