北野です。
コロナ以降、ソーシャルディスタンス、買い控えなどの様々な制限により、様々な業界で経済活動・消費活動に制限がかかるようになっている。
7割経済という言葉があるように、コロナ以前の7割のボリュームになっても経営を維持できるように従来のビジネスモデルを変化させる必要性も言われている。子の場合、従来の売上に戻すためには1.5倍の成果が求められる。この1.5倍を実現するために効率化・生産性向上を目指そうという考え方でもある。さらにこの状態を一過性のもので終わらせず、無理なく永続性を持たせることも考えないといけない。
動物病院業界では、飲食店などの他業種に比べるとビジネスモデル変革の必要性は急務ではないが、コロナ以前からの課題である働き方改革、慢性的な人手不足、採用難などを考慮すると、労働環境整備や経営体質強化を目的として、ビジネスモデルを変化させることは必要であると考えている。Withコロナ期に時流に則してビジネスモデルを変化させることができれば、Afterコロナ期により強い経営体に変化している。
動物病院において、コロナ以降で最も導入が進んだのは予約制の導入である。実際に弊社の会員様でも感覚的に3~4割程度が予約制を新たに導入した。しかし、予約制の導入など診療方式を変更する場合には、従来のキャパシティを考慮した制度の導入が必要となることは忘れてはならない。
仮に1日に100件の来院があった動物病院が、30分で2枠の時間帯予約制を導入する場合には、25時間分の診療枠を設ける必要がある。獣医師3人×8時間とするか、獣医師5人×5時間とするかなどは、各病院の獣医師数・診療時間によって決まってくる。新規来院や急患用の枠も準備しておくことを考慮すると、さらに余裕を見た設計が必要となる。
自院で予約枠というような何らかの制限を設ける場合、その制限内での診療内キャパシティを最大化する取組を重点的に行わないと、単に自ら売上低下・チャンスロスを招く結果になってしまう。今のキャパシティには対応できているとしても、キャパシティを広げられなければ成長が無くなってしまう。
生産性向上というと、今までは労働時間の削減が目的とされることが多かったが、Withコロナ期においては、診療内キャパシティの最大化を目的とすべきである。
診療内キャパシティの最大化にはいくつかの考え方があるが、基本的なものを紹介したい。売上方程式というマーケティングでの取組を考える際の基本式を用いたものである。
売上 = ①患者数 × ②来院回数 × ③診療単価
①×②によって、対応できる診療受付数が算出できる。仮に自院の診療キャパシティが1000件だとすると、①患者数250件×②来院回数4回となったり、①患者数500件×②来院回数2回となったりする。これらは1日単位、年間単位などで変わってくるので、ここでは便宜上の数値とする。もし、この数値が現在の実績よりも下回っている場合には、③診療単価を向上させることができれば、キャパシティの低下分を補うことができる。
仮に診療数は何とか保てたとしても診療クオリティが下がるなどで診療単価が下落すれば、売上低下となってしまう。ここで考えていく必要があるのが、3つの数字を上昇させるための取組である。
【①患者数】
・1診療あたりの予約時間の短縮化
・職種ごとのタスクシフティングによる獣医師の時間捻出
・デジタル活用による事前事後情報の取得
など
【②来院回数】
・診療ごとの最適な来院間隔の設定
・オンライン診療などの再診方法の多様化
・固定化のための販促手法の整備
など
【③診療単価】
・タスクシフティングによる獣医師以外による売上作り
・診療外項目の売上強化(フードなど)
・効率的な検査体制の構築
など
こういった取組である。
2021年に向けて診療内キャパシティの最大化に取組んでいただきたい。